きっかけはANA整備部門からの「デッドストックになっている機内シート生地がある」という情報でした。ANAグループでは持続可能な社会の実現に向け、“ANA Future Promise”のスローガンのもと、お客様のご理解やご協力をいただきながらSDGsの達成を目指しています。私の部署が主体となって取り組んでいる「アップサイクル」と連動させてこの生地をなんとか有効活用できないか？と考えました。

この取り組みを身近に感じられるよう、機内シートの縫製メーカーである徳島県のKOIDEX（コイデックス）さんの高い縫製技術で鞄などの生活雑貨に生まれ変わらせられたらと考えましたが、KOIDEXさんの専門領域ではないため、製品化にはアドバイザーが必要でした。せっかくなら地域振興も兼ねられればと思い、徳島県内で協力いただける企業を探しました。ANA徳島支店の働きかけで松茂町役場を通じて、全国的な人気を博す徳島県発の鞄ブランド「VanNuys」を手掛けるバンナイズさんに本プロジェクトのお話しを持ち掛けたところ、快く参画くださりコラボレーションが実現しました。

徳島県を舞台に、使いやすさにこだわり抜いて作り上げたプロダクトの数々を、携わった多くの方々の想いとともに自信をもってお届けします。

今回使用した生地は機内シートの縫製を担当した私たちにとっても馴染みがあり、航空機用に開発されたというだけあってとても良いものなので、廃棄してしまうのは勿体ないと思いました。ANAさんより「KOIDEXさんの縫製技術でこの生地を他のものに生まれ変わらせたい」とお声掛けいただいたことは光栄でしたが、「鞄を作りたい」と伺ったときは正直「できるかな？」と思いました。私たちの本業は主に自動車などに使われる縫製部品の製造であり、鞄は専門外だからです。しかしせっかくのオファーですし、技術には自信があるので、社長に相談しプライドをかけてチャレンジしてみようと思いました。

短期間に何度も阿波の開発者が会議を重ね、3～4名の試作チームが頭を捻りましたが、バンナイズ多田社長の手描きの指示書がとてもわかりやすく、なんとか試作品を作り上げました。普段とは異なる製品なので、スキルが高く呑み込みの早い上級スタッフを選抜して、10名ほどのチームを編成しました。初めて見る試作品に工場のスタッフは興味津々で、なかには「私、これ欲しい！」という声もあり、楽しんで取り組んでくれました。

商品を手に取られた方に、私たち作り手の想いも感じていただけたら幸いです。